「桜を見る会」は、総理大臣が主催し国民の税金で費用が賄われてきた。第二次安倍内閣になり、安倍晋三後援会員らも招待したため、過去5年間で1億5千万円超も予算超過した。国に損害を与えたとして、主催者の安倍首相は背任罪の疑いで東京地検に告発されたが、2度とも不受理となった。「代理人による告発は認められない」というのがその理由。告発人の憲法学者は「告発権の侵害だ」と検察庁を強く批判する。(鈴木祐太)
「桜を見る会」をめぐって、安倍首相を背任罪で東京地検に告発したのは、神戸学院大学法学部の上脇博之教授ら13人。最初に告発したのは1月14日だったが、東京地検が不受理を決めたのは約2週間後の1月31日。奇しくもこの日は、黒川弘務前検事長の定年延長が朝の閣議で決定された日だった。
さらに、上脇博之教授らは代理人弁護士と協議して意見書を付けた上で3月9日に再度、東京地検に告発状を提出したが、4月6日付で再び不受理となった。
東京地検は不受理の理由を、「代理人による告発は、刑事訴訟法に規定がなく、認められないと解するのが通説であるとされています」としている。
だが、上脇博之教授らは、これまで「森友問題」で財務官僚の佐川宣寿氏を公用文書等毀棄罪等で、2019年には河井案里・克行両議員(自民)を公職選挙法違反(多数人買収罪)で告発し、後に捜査が始まっている。
また、東京地検には、猪瀬直樹元東京知事を公職選挙法違反で、舛添要一元東京都知事を政治資金規正法違反で告発し、いずれも後に捜査が開始されている。上脇教授らは、これら全ての事件で代理人を通して告発状を東京地検に提出しており、「代理人による告発は認められない」とする東京地検の理由づけは矛盾している。
なぜ、「桜を見る会」だけは認められないのか? 上脇博之教授は次のように言う。
「従来、私たち研究者は告発の内容を知り、理解したうえで告発人になります。弁護士に代理人になってもらうために委任状を書き、多くの政治家・大臣らを刑事告発してきました。今回の背任罪での告発も同じです。ところが、今回だけは、代理人を介した告発が受理されていません。何十件も告発してきましたが、初めてのことです」
不受理の理由について、上脇教授は推測する。
「今回の被告発人が安倍首相だからではないでしょうか。黒川前検事長は「安倍政権の守護神」と評されてきた人物で、私たちの過去の告発を不起訴に導いたのではないかと噂されています。その黒川氏の直接、または間接的な意向の影響なのか、さもなければ、東京地検特捜部内の「第二の黒川」が、安倍首相のために極めて政治的な判断をしたのか、いずれかだと思えてなりません。いずれにしても、悪質な嫌がらせであり、国民の告発権の侵害です」
上脇教授らは告発をあきらめたわけではない。告発受理を目指す決意をこう述べる。
「代理人弁護士とは協議中で、近く3回目の告発状を提出することになりそうです。このまま巨悪を見過ごすわけにはいきません」
黒川弘務氏は賭け麻雀問題で検察を去った。3度目の告発状を受理するか、注目される。
■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。
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