その判断システムのようなものに日本のマスメディアは問題があると思います。現場の記者が感じていることと本社の判断や命令に差があり、その差が4、5年前に比べても開いてきている。マスメディアが駄目で、フリーががんばっているという単純な話ではありません。マスメディアの記者のなかにも良心的に現場で取材している記者ももちろんいますし、逆にフリーでも、現場にいるというだけでちゃんとした取材しない人もいます。
一方で重要なのが、現場の記者の安全を本社側が最大限に確保する努力だと思います。これまでほとんど紛争・戦争を取材してきていないため、本社側にも現場の記者にも経験が蓄積されていない。イラクの現場でも、欧米はベテランの記者・カメラマンが非常に多い。
しかし、日本の場合はなぜか「体力勝負」で若手が結構多い。やはり最後は経験の差が出る。現場を踏めば踏むほど、安全確保の備えもできるし、危険な状況も判断できる。その部分の積み重ねがないから、日本の場合はまず最初に「撤退」という選択肢から入るのではないかと思います。「安全を確保しながら、どういった方法で現場取材を続けられるか」という方針をまず最初に考えるべきだと思うのですが。
*野中 本社の方は、みんなが「事なかれ主義」でだれも責任を取る人間がいない。記者本人が自分で責任をとるから行かせてくれ、と主張しても、日本の社会では事故が起これば上層部の管理責任を問う、という雰囲気が強い。だから管理職の方も腰が引ける。往々にして他社の動きをにらみながら、結局、横並びで戦地には行かないという選択になる場合が多い。(続く)
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