辺見
その通りですよ。僕もソマリアでは米軍の「コブラ」というヘリに乗せてもらって取材しているわけです。ものを食うのも一緒で、米軍のものは20種類もあってうまいしね。盛大ですよ。フランス軍なんかはワインまで持ってきますからね。
それを食っているうちに太ったりする。それから、将校クラスの友達も出来ます。だからといって、ちょっとでも彼らが来てよかったとか、あるいは戦闘行為の中でゲリラが殺されているのを見て快感を感じたかといったら、とんでもない。
憎しみのほうを多く感じました。それをそういう風に抑制して書くか難しかったですけどね。僕はちょっと不思議でしょうがないんですよ。この「歓声をあげた」というのが。ストックホルム症候群というけれど。
綿井
従軍記者たちが本当にエンベットすべき対象というのは、米軍の兵士ではなくて、本当は炎や煙の先にあると思うんです。その炎と煙の向こうで暮らしている人たちの気持を想像して、自分の良心や気持ちを対象にエンベットするべきだと思います。
辺見
今回、テレビでもところどころ流れたけれども、アメリカの空母のプレスルームで戦闘シーンが映し出されて、誘導兵器がピンポイントで上手くいったと。そこでプレスルームでみんなが拍手して歓声をあげる。あれが何というか、醜悪としか言いようがない。
そこでいわば、戦争装置そのものとマスメディアに境界線がなくなってしまっている。それは今回、サダム・フセインが捕まったとき、あの記者会見場もそうですよね。それを伝える戦争権力の側と取材する側の境界線がなくなってしまっている。ともに喜んでいるんです。僕は、報道というものが話にならないくらいだめになってしまっていると思います。(続く)