ここにも二つの問題があります。一つは、三浦さんと言うカメラマン、この人はアメリカのワシントンに駐在している人で、たぶんイラクには一度も行ったことがなかったんだと思います。単に子どもたちが米兵に手を振っているというだけで子どもたちが圧制から開放されたと、最初からイラクの人たちはフセイン政権下で笑い声もなく暗黒の暮らしをしていたという刷り込みが彼の中にあった。
だから、単純に子どもたちが米兵に手を振っていただけで「やってよかった」と思ってしまう。しかし、これも野嶋さんのように未熟だということで片付けられない。つまり、これが日テレの検証番組の中で出てきたということです。
ということは、これを編集したプロデューサーやディレクターたちがこの発言のおかしさを全く感じ取っていない。なぜ、ディレクターたちがこれを出したかと言えば要するに「現場の記者たちはこれほど悩みましたよ」ということです。悩むのはいいけれど、悩む方向が全く違っています。ところが、この番組を見た人たちの数は数百万、ひょっとしたら一千万を超えるかもしれません。
そうすると、この番組を見た人たちがどう感じたかというと、「この米軍のイラク攻撃は、何かおかしい、正当性はないのかもしれないと思ったけど、イラクの人たちがこれだけ喜んでいるのならやってよかったのかな」というふうに、かなりの人たちが思ったと思うんです。
綿井
実は、公明党代表の神崎さんも同じようなことを言っています。去年12月にサマワ市内をオランダ軍と一緒に回って視察しました。そのとき、子どもたちがオランダ軍に手を振っている。それを見て「オランダ軍は歓迎されていると思いました」と言ってます。子供たちが手を振ることだけをもって、歓迎されていると判断する。
僕は覚えているんですが、北部同盟が01年11月にカブールを制圧したとき、あの時もカブールの市民は北部同盟の兵士に手を振っているんです。子どもも大人達もです。あの時、カブールのある市民が言っていたのは、「五年前にタリバン政権が来たときにも自分たちは手を振っていた」ということです。「これまで続いていた内戦がやっと終わるのではないか」という期待と、とにかく「自分たちはそこで手を振るしかなかった」と言うんです。
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