辺見
だから誓約書を書いてエンベッドに入れてもらう際に違和感がないと思う。首相の外国訪問に付いて行く場合は、事前にブリーフィングを受けてここでこう喋るというステートメントを活字でもらっているため、三日先の原稿まで出来ており、自分は行くだけという状況です。いわば権力が供与してくれるものを抵抗なく受け入れて伝えることを報道だと、疑問を持たずに思っている。これは世界でも珍しいケースで、中国のように報道管制のひどい所では当局の発表に対して疑問を持ち、覆そうと意欲が働くものなんだけど、日本は違うんだね。

人民日報などを除けば、一千万や八百万部出している新聞は世界中にはなく、日本のメディア各社の資本規模は世界でも確たるものがあると思うね。でも、取材の規模、効率カバーエリアや取材の深さを比較すると資本規模には全く見合わない。メジャーなマスメディアの中では日本は最低なんじゃないかと僕はみている。

ボスニアやソマリアの取材に僕も行ったけど、非常に恥ずかしいんだよね。何もとっかかりがなく、自分が見たところだけが全てで、特ダネなんてない。メディアは戦争取材のシステムを独自には持っていないために、CNNやニューズティッカーに依拠していく。今はパソコンで記事やデータベースが見られるために取材もなくなってしまっている。

Web記者と呼ばれる記者が出てきており、現場に行かずウラもとらずに記事を書いている。それはこの国のメディアの広報論上の大変な病と言ってもいいと思いますよ。これを今のところ突き崩す気配はなく、むしろ意欲的な取材は問題視されるケースが多いですよね。

某通信社のカメラマンが現場に一番乗りして真っ当な報道をしていると、煙たがられたりする。つまり横一線でみんなと同じようにやることが称揚される。テレビでは皆さんのようなアグレッシブな取材を所々に入れて、他局と差別化したかのように報道する。その巧妙さには手がつけられないと僕は思っている。(続く)

<滅びへの道>記事一覧

★新着記事