◆政府側の取締り強化も、成果は上がらず
このような情報流入に金正日政権も手をこまねいてばかりいるわけではない。
「ラジオ、テレビに対する検閲(検査)がとても厳しくなった。固定されているチャンネルを動かした痕跡があるとしょっ引かれる。
『黄色い風(資本主義の文化)の流入を阻止するため、社会の蚊帳をしっかりと張らなければならない』というキャンペーンをやって、中国から流入したポルノや韓国、中国の映画ビデオを数年前から大々的に取り締まっていました。しかし、幹部たち自身が率先して見ているから、結局たいした成果は上がらなかったと思う」
こう言うのは、やはり密輸に精を出している現役の国境警備隊の将校のA氏だ。
◆国内移動も統制強化
また、一種の「メディア」になっている脱北者の流出阻止のため、国内移動の統制は格段に強化されている。もともと自国民に厳しい移動統制を強いてきた金正日政権だが、南部地域から中国との国境沿線の都市に向かう通行証明書を得るのは「空から星を落とすほど困難」(A氏)なのだという。
もともと中国に隣接する地域に向かうためには、地域や職場からの「出張(旅行)証明書」に加えて、保衛部(秘密警察)が発行する承認番号が別途必要だった。脱北者の大量発生でその発行を受けるのが格段に難しくなった。国境地帯方面に向かう車道の検問も厳重だという。「今や中国との国境地域は、近づくことすら困難な状況」なのだという。
通行証なしで国境方面に向かっているのが発覚した場合、「非法越境企図」とみなされ、通称コッパツクと呼ばれる鍛錬隊という収容施設に入れられてしまう。(続く)
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