石垣市立図書館は、沖縄風の外装に近代的な設備を整えた、まことに優美な施設である。内原館長は、カジュアルな服装を身にまとったはつらつとした女性で、オフィスや受付にも公立の図書館とも思えぬ活気と温かさが満ちている。
田代安定(*詳しくは前回を参照)の取材に来たというと、館長は身を乗り出して、「そうですか」と歓声を上げ、「八重山の人間は、田代のやったことにもっと注目してもいいはずなんです」と持論を展開し、秘蔵の資料を出してきてくれたのである。
これは、三木健さんという琉球新報の記者(現在は専務)が、図書館に寄託したもので、東京のあちこちの図書館をまわって集めた貴重なものである。私は、三木さんの了解を得るという前提で、その一部をコピーさせてもらった。
図書館の二階には、郷土のコーナーがあって、八重山に関する図書が集められている。このコーナーを担当しているのは飯田さん。その机の後ろには、なんと台湾コーナーがある。日本の公設図書館で台湾文庫を設けているのは、ここだけではないだろうか。それは、八重山を語るときに、台湾抜きには語れないからである。
石垣市が平成3年に出した「八重山写真帖・20世紀のわだち」という写真集がある。上下巻の立派なものだが、その第四章は、「憧れの台湾」となっている。台湾には、鉄道も、帝大も、デパートも、エスカレーターもあった。これらは当時、本島にもなく、台北は石垣から見てもっとも近い憧れの大都会だったのである。
(2004年2月13日)