台湾総統選挙まであと二十日足らずに迫った。支持率調査では民進党の陳水扁現総統が連戦国民党候補を猛追し、ほぼ互角の大激戦。(写真右:台北市内メインストリートをふさいで手をつなぐ陳陣営の人たち。)世界のマスコミはたいてい、この一戦を、独立派と統一派の激突と見る。次回、四年後の総統選は北京オリンピックの直前となる。
その時点で、大きな変化は生まれにくいとするなら、今回こそが台湾の運命を決める一大決戦というわけである。
確かにそうなのだが、外は中国の脅威、内は支持率が半々というカオスの状態では、真っ向勝負とは行きにくい。宣伝戦はただひたすら双方中傷誹謗の応酬となっている。方や敵の夫人が株のインサイダー取引で儲けていると迫れば、方や敵の夫人は夫の暴力に泣いてきたと応酬する。娘の脱税までもが槍玉にあがる。泥沼である。
(写真右:台北市内メインストリートをふさいで手をつなぐ陳陣営の人たち。)
苦境の陳陣営としては、政策や実績よりも、高まりつつある台湾人意識にすがるしかない。
そこで考案されたのが、台湾本島を北から南まで百万人の手をつないで台湾を(中国の武力行使から)護ろうという台湾史上空前のイベント。今日の午後二時半、中間点の苗栗で、陳水扁総統と李登輝前総統が手をつなぎ、数分間、基隆から屏東まで人々の手と手で一本の線につながった。
一方、野党連戦陣営は、「心と心をつなぐ」と称して、北から南までの聖火リレーをおこなった。この日双方が動員した観光バスは数千台とも言われ、水面下では激しいバスの争奪戦が展開されたという。
そうした狂騒のなか、『悲情城市』の侯孝賢監督は記者会見を開いて、来年こそは統一をと呼びかけた。実は、今日は、二二八事件の記念日である。1947 年のこの日、台湾人と戦後渡来した中国人が衝突し、軍隊が出て鎮圧した結果、数万人の犠牲を出している。侯監督は、この日は本来民族間の和解を記念すべき日なのに、反対に対立をあおる日になったことを悲憤慷慨している。
あと二十日、台湾の未来をかけたぎりぎりの闘いが続く。
(04年2月28日)