新倉 約2500通配ったなかで21通の返信があり、そのうち回答が記されていたのが12通でした。例えば、「有事法制やイラク新法(イラク特措法)などの論議で自衛官の気持ちが考慮されていると思いますか?」との問いには、「考慮されている」と答えた人が1人、「十分に考慮されているとは言えない」が5人、「全く考慮されていない」が4人、「その他」が1人。
「あなたが自衛隊に入ったとき、外国を占領する軍隊に加わることを想定していましたか?」という問いには、「予想していた」2人、「予想していなかった」6人、「その他」が2人。
アンケートの返信は少なくても、平和運動グループが直接自衛官にたずねるアンケートに、貴重な生の声が寄せられたこと自体に意味があります。回答してくれた人は真剣にこの問題を考えて答えてくれたと思います。
当事者である自衛官本人の気持ちが無視されたまま、自衛官の戦死を合法化する法体系が作られ、想定外の任務に就かされてゆく現状を浮き彫りにするアンケート結果だと思います。自衛隊が専守防衛という枠を、基本を踏みはずすことへの不安や疑問は、自衛官のなかにも高まっているのではないでしょうか。
吉田 新倉さんも加わっている市民運動グループ「平和船団」は、横須賀の海上自衛隊基地からイージス護衛艦や補給艦などがインド洋に出てゆくときに、ヨットやゴムボートを浮かべ、拡声器を使って艦上の自衛官たちに呼びかけていますね。どんな呼びかけをしているのですか?
新倉 平和船団は、出航前に整列している自衛官の顔が見えるところまで、近づくことができます。そして僕らは、このように呼びかけます。
「『戦場』に向かおうとしている自衛官の皆さんに、行かないでほしいと心から訴えます。皆さんは補給任務ですから、直接の戦闘行為に加わる、ということではないかもしれません。しかし、皆さんが運んだ油によって、米艦船は実際に戦闘行為をおこないます。このことを考えたら、自衛隊も戦争に加担していると言わざるをえません」
「いま皆さんは、皆さん自身を極めて危ういところへ持っていこうとしています。自衛官の皆さんのいのちを守っている憲法9条を、皆さんは皆さんの手で葬り去ろうとしているのです。憲法が持っている平和力は、戦争をしないという世界の人への約束は、自衛官の皆さんのいのちも守っているのです。この現実的な憲法の力に、ぜひ気がついてください」
「私たちは、自衛官のいのちを大切なものだと考えています。自衛隊という新しい『日本軍』が再び外国の人のいのちを奪うことを許せないと思う私たちは、同じように、自衛官のいのちも大切だと思います」
「憲法9条が皆さんのいのちを守っています。その9条を空洞化し、死文化する自衛隊の『戦場』への派遣を、私たちは認めるわけにはいきません。自衛官のいのちを守るためにも、家族の皆さんの不安を取りのぞくためにも、自衛官の皆さん自身が憲法9条を支えてほしい、そう心から訴えます」
「アフガニスタンでは、米軍による報復攻撃によって、何千人もの市民のいのちが奪われています。だから、『戦場』に行かないでください。米軍の報復戦争を支援しないでください」
「私たちは何もできないかもしれませんが、皆さんの不安は私たち自身の不安でもあるのです。何かあれば連絡してください」 (2へ続く >>>)