吉田敏浩×新倉裕史 対談(1)
憲法の平和力を回復する。自衛官との対話を通じて、憲法9条のもつ意味を再発見する試み。

◆自衛官とその家族への呼びかけ
*吉田 今回は「非核市民宣言運動・ヨコスカ」の新倉裕史さんにおいでいただきました。新倉さんは1948年に横須賀にお生まれになり、現在は印刷会社に勤務されています。1972年に、アメリカ海軍の空母ミッドウェーが横須賀基地を母港とするのに反対する市民運動に参加して以来、横須賀を中心に反基地運動を続けられています。

対談のテーマは「憲法の平和力」です。
イラクに自衛隊が派兵されました。昨年、武力攻撃事態法など有事3法が成立し、今国会には国民保護法制案や米軍行動円滑化法案など有事関連7法案が提出されます。戦争のできる体制づくりが着々と進んでいます。

イラク侵略の先制攻撃に見られるようなアメリカの世界戦略に追随して、日本も軍事大国化しつつあり、憲法9条を変えようとする動きも強まっているのが現状です。そうしたなかで、憲法が持つ平和力を市民一人ひとりが再発見し、その力を活かして、戦争に向かう流れに反対の声を上げていくことは大きな意味があると思います。

「非核市民宣言運動・ヨコスカ」など神奈川の市民運動グループからなる「自衛官・市民ホットライン」は、街頭で自衛官とその家族に、「憲法9条が自衛官のいのちを守っていることに気がついてほしい」と呼びかけ、電話での相談にも応じています。イラク派遣への疑問や不安、悩みなどについて、自衛官とその家族にアンケートもおこなっていますね。

*新倉 ホットラインは1992年の8月、カンボジアPKOで海上自衛隊の補給艦が横須賀から出港するのに際して始めました。以後、テロ対策特措法によるインド洋派遣やイラク特措法による派遣などの問題が出てくるのに応じて、期間をくぎって3次、5回にわたって開設しています。

例えば、インド洋派遣をめぐって自衛官の母親から、「憲法9条があるから自衛隊は戦争をしないと思っていた。だから息子が自衛隊に入りたいと言ったときに認めたのです。息子が行くようになるかもしれないと思うと、心配で心配でなりません」という声が寄せられたりしました。

吉田 去年の夏に私が取材に行ったとき、新倉さんたちは横須賀中央駅前で、自衛隊のイラク派遣反対を訴え、自衛官へのアンケートを配っていましたね。そのとき、こう呼びかけていました。

「自衛官とその家族の皆さん、いま皆さんがおかれている状況は深刻だと思います。イラクでは米英占領軍への反発が強まり、米兵の戦死が相次ぎ、また米軍によって多くのイラク人が殺傷されています。小泉首相は『どこが非戦闘地域かわからない』と国会で無責任な答弁をしました。自衛官が海外の戦場でいのちを落とすことになるかもしれない法律を作るというのに、当事者である自衛官の気持ちは考慮されたでしょうか」

「私たちは自衛官がイラクで殺されることも、またイラクの人びとを殺すようなことになるのも望みません。いま、皆さんの意見が一番求められています。疑問の声を上げてください。不安があれば伝えてください。皆さんの意見を私たちは社会に届けたいと思います。ひとつひとつの声は小さくても、それらが重なり合うとき、派兵を止める力になると信じます」

日曜日で、制服姿の若い自衛官が行き来し、アンケート用紙を受け取る人も少ないながらいました。アンケートの結果を少し紹介してください。
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