吉田敏浩×新倉裕史 対談(7)
自治体には国家の暴走を止める平和力がある。自治体の権利をさまざまに駆使してこんなことができる!
《有事法制の危険な本質》
吉田 昨年6月に武力攻撃事態法など有事関連3法が成立しました。今国会にも小泉政権はいわゆる国民保護法制案や米軍行動円滑化法案など有事関連7法案を提出して、有事=戦争法制システムを一気に築き上げようとしています。つまり戦争のできる制度をつくろうとしているわけです。
小泉政権は、「有事法制は、日本が攻撃されたときに国民を守るためのものだ」と主張しています。しかし、表向きには広く語られない危険な本質を有事法制は持っています。それはアメリカが起こす戦争に日本も加担して、戦争当事国になってしまうという危険性です。
米軍行動円滑化法案とは、日本が武力攻撃を受けた場合のいわゆる「日本有事」に際して、自衛隊と共同で軍事行動する米軍を支援する制度をつくるための法案です。武器・弾薬・燃料・水・食糧などの軍需物資、それらを補給し輸送する日本側の役務、港湾や空港などの施設を、米軍に対して提供できるようにするための制度づくりを狙っています。
つまり、在日米軍基地や自衛隊の基地だけでなく、民間港や民間空港をも米軍が使用し、日本政府は提供する軍需物資を輸送運輸関連の民間企業に運ばせ、港と空港の管理や給水業務、廃棄物処理などを自治体にさせる、ということです。
1999年に成立した周辺事態法では、「周辺事態」という怪しげな概念を設け、アジア・太平洋地域で、紛争への軍事介入やイラク侵攻型の先制攻撃など米軍が起こす戦争に、日本が官民あげて協力する仕組みがつくられました。
補給・輸送など米軍への後方支援は兵站活動にあたります。米軍の相手側から日本も敵と見なされて攻撃される可能性が高い。そうなると「周辺事態」が日本への「武力攻撃予測事態」や「武力攻撃事態」に波及し、併存することもありえます。その場合、「予測事態」の段階で武力攻撃事態法など有事法制が発動されるでしょう。
このようにアメリカがおこなう戦争に日本が加担することで「日本有事」が引き起こされ、政府は自衛隊を参戦させ、国民を統制し戦争協力させようとする、というのが最も想定される「有事」です。有事=戦争法制システムの真の狙いはそこにあります。
しかし、有事法制ができたからといって、国民が戦争協力をしなければいけない義務はなく、それを拒否すること、非協力を通すことは権利としてある。また、そのことによって有事法制システムを空洞化させることができる。そう新倉さんたちは主張されています。それは周辺事態法の問題が出てきたころから一貫しています。
このことについて、横須賀での平和運動の歩みにもふれながら、自治体の平和力という点から話してもらえますか?
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