そして、その選挙には賭博がからむ。結局、その賭博が、総統選そのものの行方さえも変えてしまったようである(テラ銭総額700億円、犯人は胴元の可能性が高いといわれている)。
連戦候補は、敗戦の夜、「不公平的選挙」と支持者に訴え、それが今回の抗争の号砲になった。
確かに不公平な展開になった。が、地震が襲おうと台風が来ようと、不正がない限り、その結果を受け入れるのが民主社会である。なにか疑問があれば、法的手段を粛粛ととるだけのことである。国民党主席、台湾大学政治学部教授、行政院長という経歴をもつ人物にして、この有様。台湾という島の民主主義はまだまだなんだあというのが、多くの在台日本人の感想であった。
ちなみにNHKは、「不公平」ではあまりに馬鹿げていると思ったのか、わざわざ連戦発言の字幕を「不公正」に変えていた。なんと親切なことか。
「○×不公平!」「○△不公平!」という流行語まで作った、選挙後の騒擾。しかし、あほらしいと、無視はできない。なぜなら、その座り込みには、馬英九台北市長、許信良元民進党主席、さらにはホウシャオシェン監督、そしてかのビビアンスーまで顔を見せ、応援していたのであるから。だからこそ台湾の病状は深刻なのである。
駄々をこねている子どもをあやすには、不合理でもその言い分をきいてやるしかない。陳政権は、開票やり直しを含めて、それらを受け入れるだろう。もしほんとうに不正があれば民進党政権が、不正も集計ミスも見つからなければ中国国民党が瓦解する。
自国の警察も病院も選管も信用できない人たちは、米国から専門家を招いて、元首銃撃の鑑識を委ねている。すでに「主権国家」として矜持も捨てたようだ。台湾は言い知れぬ不安に覆われている。ほくそえんでいるのは、中国ばかりである。
台湾の複雑な事情については、集英社新書『台湾革命』を参考にされたい。
(04年4月01日)