そこで働いている人達はよくやっています。外務省の末端で働いている人達の中には心ある人がいることも事実です。ただ海外で現地の大使館員の邦人保護の姿勢はゼロに近いと感じています。諸外国の大使館と比べても自国民保護するという姿勢と意欲は日本の外交官達には非常に乏しいということです。外交官達は常に東京を向いて仕事をしているわけです。今回の人質の解放についても、イスラム聖職者協会のクベイシ師という人が重要な役割を果たしましたが、話を訊いてみても、日本大使館が解放のために何らかの影響を及ぼしたという話はありませんでした。
大使館は常日頃「外交」をやっていないから、このような事件が起きても何も手を打てないわけです。「外交」というものは「外と交わる」ことですが、日本の外交官達は「内交」なんです。特に東京と交わり、東京に忘れられては困るということを考えているみたいです。普段からイラクの人達と多方面に渡って交流していれば、こういう事件が起きた時にもすぐにアクションを起こせるわけです。
しかし、今回の人質事件では全くアクションを起こせなかった。日本政府がやることと言えば、ヨルダンの国王やシリアの政府にお願いすることだけで、ファルージャからはとっても遠い話なんです。対策本部もヨルダンのアンマンに置かれていますが、バグダッドに置けよと思いますね。
ごく一部の良心的な外交官もいますが、大勢としては「内交」ばかりに目が向いているのが日本大使館の現状ですね。そういう日本政府に「自己責任」なんて言われる筋合いは全くない。小泉首相も「人質解放のために政府のどれだけの人が汗を流したか」と言っていましたが、「つべこべ言わずにやれよ。たかが一週間や二週間のことで恩着せがましく言うなよ」と思います。
日本大使館の大使の年収というのは2500万円~3000万円で、退職後も外交官達は天下りをしたり、外郭団体で2,3年毎に高額の退職金をもらいながらお金を貯めているんです。僕が言いたいのは「金をもらっている分だけ働けよ」ということだけです。少なくとも我々は自分のお金で行って、自分の責任において行動しているわけです。
今回の橋田さんの事件で「自己責任」という言葉が政府から出てきていますが、政府からジャーナリストが「自己責任」の文脈で批判されているという国は聞いたことがない。欧米のジャーナリストたちに対しても恥ずかしい話です。
これは以下のシンポジウムでなされた野中章弘の発言をまとめたものです。
シンポジウム「自己責任論を巡って」
日時:5月30日 在日本韓国YMCA
パネリスト:
ジャーナリスト:野中章弘(アジアプレス)
NGO:吉岡達也(ピースボート共同代表)
司会兼:西野瑠美子(VAWW-NET Japan共同代表)
主催:WORLD PEACE NOW 実行委員会