(写真右:手を足を同じ方向に出して“行進”する村人。山暮らしで、体力は抜群だが、体育の経験がない村人のなかには、なかなか歩き方を覚えられない村人が多い。)
午後3時すぎ、バザールの広場に60人ほどの参加者が列を作って、“行進”の訓練が始まった。

2拍子の太鼓の音に合わせて、“セクション・コマンダー” の男が「エク、ドゥイ(1,2)。エク、ドゥイ。プラトーン(小隊)全員、セクション・コマンダーをよく見て!」と怒鳴る。

単純な行進の練習だが、学校にも行ったことのない大人も多く、なかには同じ側の足と手が同時に出てしまい、なかなかうまく行進できない人もいる。

74歳の老人から11歳の男の子まで、さまざまな年齢の村人からなるこのグループが、「将来、ジャナ・ミリシア(人民義勇軍)のプラトーン(小隊)になるのだ」と、マガル族のセクション・コマンダーは話す。人民解放軍の兵士が一箇所に定住せずに、あちこちを移動して歩くのに対して、ジャナ・ミリシアは各村の村人がメンバーとなる。

基本的に自分の村にいて、治安部隊から村を守り、村のための“生産活動”を行う。ジャナ・ミリシアは、人民解放軍の予備軍と言ってもよく、人民解放軍の兵士の多くはジャナ・ミリシアで経験を得たあとにリクルートされる。マオイストの党首“プラチャンダ”は、9月1日に出した声明文のなかで、現在、全国に10万人のジャナ・ミリシアがいることを明らかにしている。

(写真右: 練習のあと、コルチャバン村に向かって3時間の道のりを“行進”する村人たち。)
行進の訓練をする老人たちは、このキャンペーンの意味をどれだけ理解して参加しているのか。

1日につき100ルピー、つまり、10日間で1000ルピーを支払えば、このキャンペーンへの参加が免除されるとも聞いた。金のある人は“懲役”を免除されるというシステムは、どうもコミュニストらしくないとも感じたが、ネパールのマオイストはその点、かなり現実的である。

半時間ほどの訓練のあと、村人たちはそのままコルチャバン村に行進していった。私たちは翌朝、彼らのあとを追うことにした。

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