現在のパレスチナの状況はイスラエルの侵攻のため、家屋破壊や封鎖で社会そのものが破綻している状況だ。アラファト議長の死によって、パレスチナ問題は48年の難民となった世代では解決できず、次世代に残されようとしている。
アラファト議長がその人生の大半をパレスチナ闘争に費やし、パレスチナの存在を世界に知らせ、イスラエルと闘い続けてきたことは大きな功績だった。しかし彼が、権力に固執せず、ウンム・オマルのような現実に苦しんでいる人々とともに歩み続けていたなら、もっと早くパレスチナ国家を実現する道が開けていたかもしれない。
アメリカやイスラエルのいうように、アラファト議長の死が、即、和平への道につながるとは思えない。一時的な混乱は避けられないと思うが、国家建設という最終目的のためにパレスチナ人の抵抗は終わることなく続くだろう。どんな過酷な状況になっても闘い続ける人たちだから。
(写真 古居みずえ 野中章弘)
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