スタジアムや病院・水道管補修も含めて14カ所でいまも作業を継続しているが、それらの実際の作業はイラク人業者が行っており、自衛隊員の仕事は「指導・監督」だ。医療支援も「技術指導・助言」であって、直接医療行為をするわけではない。
サマワ郊外にあるワルカ地区では、3月30日から道路補修作業が行われている。
4月上旬に私が訪れたときには、自衛隊員数人が直接計測作業をしていた。川沿いにある6.5キロの道を補修する工事の準備だったが、4月8日に日本人人質・拘束事件が発生したため、作業はその後一時中断。自衛隊広報が毎日発表する「活動内容報告」によると、4月10日以降、5月1日までの間は、作業そのものがワルカでは1日も行われていない。
5月2日にようやく工事を再開したが、イラク人業者による作業がほとんどで、再開してから7月29日までの間、自衛隊員がこの現場に直接足を運んで「指導・監督」にあたった日は合計で10日だけだった。また、4月10日と12日に関しては、給水以外の宿営地外での活動は一切されていない。
このワルカではいまも道路補修作業が続いているが、私が現場を訪れた7月5日に作業にあたっていたイラク人業者はわずか5人。1日5000ディナール(約3ドル)の日当だという。その日は、小さな木製の橋を対岸にかける作業をしていた。道路補修作業は「砂利舗装までで、もう終了した」と作業にあたるイラク人業者の1人はいう。
しかし、サマワ自衛隊広報担当者に確認すると、「道路補修作業はまだ終わっていないはず」という。一方、防衛庁陸上幕僚幹部広報室は、今後「アスファルト加工まで行う」としているが、サマワの自衛隊広報担当者は「アスファルト加工をするという計画は特に聞いていません」とこたえる。
これらを見ても、実際の現場と自衛隊・防衛庁の間で、工事の計画や方針が共有されているわけではない。雇用創出のために、イラク人業者にできるだけ任せるという方式を取り始めた自衛隊だが、「指導・監督」がどこまで行き届いているのかは疑わしい。
(写真、上):サマワ自衛隊宿営地での給水作業。毎日朝7時半ごろから給水車が集まり、一日平均150トン程度の水を供給している(7月6日 サマワ自衛隊宿営地にて)
(写真、下):浄水場で水を補給する何台もの給水車。自衛隊の給水活動以外にも、サマワ周辺では毎日給水活動が行われている(7月7日 サマワ郊外ルメイサ浄水場で)
(前編終わり。後編に続く)