すべての自衛官たちがイラク行きを希望したのだろうか。イラク行きを拒否した自衛官はいなかったのだろうか。この疑問を晴らすため、防衛庁に情報公開を求めた。

吉田敏浩

派遣延長を既定方針とする小泉政権とイラクの惨状
2004年11月、陸上自衛隊の第4次イラク派遣(派兵)部隊(約500人)が出発した。自衛隊イラク派遣の期限は12月14日に切れる。各種マスメディアの世論調査では、「派遣延長反対」の意見が約6割を占めている。しかし、ブッシュ大統領に付き従うだけの小泉首相は世論を無視し、12月9日に1年間の派遣延長を閣議決定した。

イラクでは、米軍がファルージャへの無差別攻撃をおこない、街を破壊している。民間人の死者はおよそ2000人に達するという報道もある。イラクの人びとにおびただしい流血を強いて生命を奪いつづける米軍の行為は、国際人道法違反の非人間的なものだ。

日本は米国のイラク侵攻と占領を支持して自衛隊を送り、多国籍軍の一翼を担うことで、米国による非道な事実上の占領に加担している。米軍によって殺され傷つけられるイラクの人びとに対して、日本は間接的にであれ加害者の側に立っているのだ。自衛隊は一刻も早くイラクから撤退すべきである。

イラク(クルド地域を除く)では非常事態宣言が出されている。サマワの自衛隊宿営地はロケット砲や迫撃砲で何度も攻撃され、いつ死傷者が出てもおかしくない危険な状況にある。にもかかわらず、小泉政権は「非戦闘地域」というごまかしを押し通している。

混乱が激しさを増すイラク情勢と自衛隊派遣延長に走る日本政府の姿勢に、不安や疑問をつのらせる自衛官とその家族も多いはずだ。しかし、自衛隊内ではイラク派遣の問題について箝口令がしかれており、自衛官とその家族が自らの思いや意見を広言できる空気ではないという。

自衛隊のイラク派遣は来年1月でまる一年になる。陸上自衛隊の派遣部隊の構成は、北海道駐屯の部隊から東北駐屯の部隊に交代し、第5次からは中部地方、そして近畿、九州に駐屯する部隊へとローテーションで代わっていく予定だ。
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