そしてみんな去っていった
ほとんどのサポーターたちは帰国のためスタジアムから直接空港へ向かった。日本代表選手も5日後にひかえたバーレーン戦のため、2時間違いの専用機でその夜のうちにイランを発つ。
その晩、空港で報道関係者や日本人サポーターたちの何人かに話を聞くことができた。今回の試合結果はともかく、総合してイランという国に悪い印象を持ったという人には出会わなかった。もちろん、上から物を投げることへの不快感や、柵越しに噛み付くように威嚇してくるイランの若者たちに「怖かった」と漏らす人も多い。しかし、アウエーでの試合やヨーロッパ・リーグなどの観戦経験のある60代の男性は、「あんなもんだよ。むしろきちんとしてたよ。イデオロギーとか、中国みたいな動員もなく、彼らはサッカーをわかったうえでやってることだから、怖いとかはなかったよ」と好印象を語った。
0泊3日の弾丸ツアーではなく個人でやってきた29歳の男性は、「町は思ったより近代的で、空気も景色もきれいだった。バザールとかは正月休みでどこも閉まっていて残念だったけど。イラン人は友好的だったよ。試合前から『3対O』とか『2対Oで俺たちが勝つ』とか結構あつかましい連中だなって思ったけど (笑)」。
今回初めてこの国を訪れた日本人たちは、サッカーを純粋に楽しみ、イラン代表選手の強さを冷静に受け止め、かすかに感じ取った異国の空気や手触りを胸に、日本へと戻っていった。カリカリしていたのは、イラン在住ゆえついイラン人に注文をつけてしまいがちな私だけだったのかもしれない。
最後に日本代表選手たちを見送り、わたしのイラン戦取材も終わった。
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