玉本英子が取材現場から送る日誌。現在イラクで取材中
2006年2月6日<トイレがない!>
イラクで取材に出て感じることは、女性用トイレがないことだった。
「私たちにとって、トイレは深刻な問題なのよ」女性たちは言う。
男性の場合、街の各所にあるモスク(イスラム寺院)に行けばトイレがある。時々だが、空き地の隅にしゃがみこんで用を足している男性を見かける(こちらでは、男性の多くは日本のような立小便はしない)。
一方、女性の場合は食堂かホテルに駆け込むことになる。
下町の食堂のトイレの多くが男女共用だ。そのため、女性がトイレを使うときは、知り合いの男性(多くは家族の誰か)に頼んで、ほかの男性が立ち入らないよう、ドアの前に立つトイレ番をしてもらう。
私の場合、恥ずかしくても見知らぬ男性が入ってくる方が怖いので、お店のウエイターさんにお願いしていた。
イラクの治安が悪化してからは、トイレ探しにウロウロすることなどできない。水分を取らないようにしている。
トイレに苦労するのは、女性だけではないようだ。以前取材した、アルビル市内の小学校では、全校児童580人に男女共用のトイレがひとつあるだけだった。子どもたちに聞くと、「学校ではトイレには行かないもの」という。
授業が終わると猛ダッシュで家へ帰る子がいた。トイレに行きたかったのかなと、ふと思ってしまった。
小学校のトイレ設置が先決だが、女性用の公衆トイレができたら、と願う。
【写真:ドホーク市内の食堂内の女性用トイレ。
右奥が便器。紙は置いていない。そばにおい
てある専用ジョウロを使う】