<イラン核騒動は欧米によるいじめだ>
その2 伝えられないイランの主張と権利
ではなぜ「イランは核兵器製造を目論んでいる」という欧米の主張がまかり通っているのか。そこには、明らかにマスコミの意図的な報道の仕方がある。
核問題に登場する専門用語は、一般の人には難しい。例えば、争点となっている「ウラン濃縮」という作業は、何を指しており、実際どれほど危険なものなのか。そうした説明を抜きにして、『ウラン濃縮活動は国際社会への挑戦である』とか、『イランが核兵器製造につながるウラン濃縮を諦めないかぎり―』などというアメリカ政府ばりの記事を載せて、アメリカのイラン戦略の一翼を担おうとしている日本のメディアのなんと多いことか。
まず、ウラン濃縮とは何か。天然ウランには、ウラン234、ウラン235、そしてウラン238が含まれるが、このうち原子力発電や核兵器に利用されるのは、全体のわずか0.7パーセントに過ぎないウラン235である。天然ウランを遠心分離器に入れると、軽いウラン235だけが中心付近に残る。この作業を繰り返してウラン235の比重を高めることが、いわゆるウラン濃縮作業である。
ウラン235は濃縮比率に応じて、低濃縮ウラン(5%以下)、高濃縮ウラン(20%以上)、そして兵器級ウラン(90%以上)の3つに分かれる。原子力発電に必要なのは低濃縮ウランであり、イラン政府が求めているのはこれである。IAEA(国際原子力機関)の監視の下で低濃縮ウランによる核エネルギーの平和利用(つまり原子力発電)を行うことは、世界のあらゆる国に認められた権利であり、当然、日本もIAEAの監視下でこの低濃縮作業を行っている。
イランもまた、原発のための低濃縮作業だけが目的であり、ひそかに高濃縮を行わないようIAEAの監視を受けると表明しているにもかかわらず、世界中からこれほどの非難と圧力を受けているのはなぜか。アメリカと敵対しているからである。
アメリカの言い分は、「低濃縮の技術を獲得すれば、いずれ高濃縮、そして兵器級ウランを獲得することも可能だ」とか、「イランは高濃縮の実験を密かに行おうとしている」といったものだが、長年にわたりイランの核開発を監視してきたIAEAは、そういった証拠は一切ないと退けている。にもかかわらず、こうしたいわれなき非難ばかりを流す報道が巷にあふれ、イランの主張と権利に関しては沈黙が守られているのが現状である。
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