「馬現象」
060330.jpg「馬現象」と呼ばれる旋風が吹き荒れている。米国訪問から帰国した馬英九中国国民党主席にスポットライトが当たり、その端正な顔に花吹雪がキラキラと降り注いでいる格好だ。

国交のない国の野党主席にもかかわらず、高官との会談を組んだ米国政府の異例の対応、ナショナル・プレス・クラブやハーバード大学での講演の盛り上がり、華人メディアの異常な関心などをあわせ、馬英九の訪米は「大成功」と受け止められている。

主席選挙での圧勝に始まり、昨年末のいっせい地方選挙での勝利、さらに今年三月の嘉義市立法委員補欠選挙での勝利(嘉義は民進党の牙城だった)、それに続いての満を持しての米国訪問である。もちろん、これは二年後の総統就任を見込んだ根回しなのだが(就任後は外遊が制限される)、この間の支持率は加速度的に伸び続け、七割を超えようとしている。それを華人メディアは「馬英九現象」と称しているのである。

060329.jpg反対に台湾派は、陳総統の支持率も民進党の支持率も18%と、国民党の半分に落ち込んでいる。もはや政権は事実上の「死に体」状態で、先を見越して、離党を表明する議員まで現れる始末だ。

先日おこなわれた馬英九=中国派のデモは、「統独の争いは中止して、生活を守ろう」と市民に呼びかけた。彼らとしては、国家認識の問題から国民の目をそらして、経済に目を向けさせ、陳政権を崩壊に追い込もうというのである。

経済の発展とは、すなわち中国との交流拡大を指す。このまま人と金の関係を深めていけば、独立なんて誰も信じなくなるという思惑であろうか。

そして実際、台北の若者たちは「それでもいいじゃないか」と思い始めている。馬英九現象は、そうした綻びから噴き出したマグマともいえる。半ば拮抗していた両派の勢力図が、大きく動き始めたようだ。日本は、その辺りの見極めを誤らないようにしたい。
それにしても民進党の惨状は目を覆うばかり。政府高官や所属議員が次々に汚職や不正で摘発され、日々のニュースはそれらで埋まっている。腐敗は中国国民党だけの特許ではなかったのである。

その難問山積の民進党に迫られているのが、パンダの対応。中国からの申し出を受け入れるべきか否か。受け入れれば中国の思う壺。断れば、ますます国民の失望をかいかねない。その苦悶こそがパンダの話を持ち込んできた国民党の思う壺なのであろう。
写真:中央が馬英九。原住民の取り込みにも必死だ。

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