それらは国営メディアを通した政府要人の発言そのままである。市民は核問題に関して、新聞やテレビを通して情報を得ているし、関心も低くない。
しかし官製メディアや当局の厳しい統制下で活動するメディアから得られる情報は、正論である一方で、画一的であり、イラン人のアイデンティティーをくすぐる意図的なものが多い。

「アメリカはイランの実力をよく知っている。彼らはイラクとアフガンで手一杯だ。もう一つ前線を広げる余裕はないよ。今イランを攻撃すればどうなるか、良く分かっているはずだ」
35歳の会社員が答える。

つまり、イラン政府ひいてはイラン人は、
「アメリカ政府はそんなにバカじゃない」
と評価しているわけである。だが、イラクでの失敗はどうなのか。アメリカの情報機関はそんなに信頼に値するのだろうか。

アフマディネジャード大統領がイランのウラン濃縮成功のニュースを伝えたその翌日、アメリカのローブ大統領補佐官がアフマディネジャード大統領を
「交渉のできるまともな人間ではない」
とこき下ろした。

ローブ氏はさらに、
「イランは奇妙な歴史感覚やイデオロギーで凝り固まった人たちに導かれており、(外交的解決は)難しくなるだろう」
と発言している。アメリカ人の若者の75パーセントが地図上でイランの場所を指定できないという、ナショナル・ジオグラフィックによる調査結果が先日メディアに流れたが、他国への無関心と無理解は政治の中枢にも及んでいるのではないか。

大統領を補佐する人間が、近い将来戦争をするかもしれない国に対してこの程度の認識で、果たしてアメリカは正確な情報に基づく合理的な政策の取れる国と言えるのだろうか。私は多くのイラン人のようには楽観できない。
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