「陳水扁時代の終焉へ」
台湾南部の貧しい家に生まれ、弁護士、台北市長を経て「一国」の総統にまで登りつめた陳水扁氏だが、いよいよその命運が尽きようとしている。
娘婿がインサイダー取引によって逮捕されたのに続き、総統夫人を含む一族一家に「カネ」をめぐる疑惑が次々に浮かび上がり、政権の維持がきわめて困難になった。
「総統」とは認められないと、すでに台北市議会の議場からは陳総統の写真が撤去され、台中・台南・高雄各市でも追随の動きがあり、辞任を要求する声はとめようのない大波となっている。
2000年の総統選で、中国国民党から政権を奪取し、「台湾の子」ともてはやされ、台湾自立路線の象徴的存在だったが、中国との関係修復を求める世論の高まりの中で、支持率は低落の一途をたどっていた。2004年にはかろうじて再選されたものの、その手腕を発揮する機会もなく、ついに身内の不祥事で崖っぷちに追い立てられることになった。
民進党・陳水扁の時代の終焉は、1988年、李登輝総統就任以来の「台湾の時代」の終焉でもある。台湾は、深い失望感とともに新しい局面へのスタートを切ることになる。
残り二年の任期は呂秀蓮副総統が継ぐ方向で取り沙汰されているが、交代までには紆余曲折が予想される。
2000年の興奮から六年、「台湾革命」の結末はいかにも侘しく、私も残念でならない。
*上の写真は2000年総統選挙当選時に配布された正副総統のもの
下の写真は陳総統初当選の瞬間、挨拶に聞き入る支持者たち。人々の目は希望に輝いていた