【市街地上空を飛び、基地に着陸しようとする米軍FA-18戦闘攻撃機】
【市街地上空を飛び、基地に着陸しようとする米軍FA-18戦闘攻撃機】

しかし、「執念の飛行機数記録六年間の集約」と題した自らの記録文書の冒頭に、「謹んで亡妻の霊に捧ぐ」と記しているところに、言い尽くせぬ思いが表れている。すでに息子も娘も独立して家庭を持ち、いま尾形は独り暮らしだ。昨年、心筋梗塞で倒れ、緊急処置の後、バイパス手術を受けた身でもある。

「高度経済成長に伴う深刻な公害問題から、1967年に公害対策基本法(後に環境基本法)ができ、それに基づいて73年、『航空機騒音に係る環境基準』が告示されました。大気・水質・土壌・騒音など様々な環境基準のひとつです。そこには一貫して憲法第25条の精神が反映され、国民の健康を保護し、生活環境を保全するという目的が込められています。

厚木基地に関してこの環境基準が達成されるなら、極めて静かになるはずです。しかし、現状を見るかぎり達成される気配はありません」と尾形が指摘するように、航空機騒音による被害は公害そのものだ。

厚木基地周辺の場合は、一種の基地公害といえる。この基地公害を告発し、憲法第25条を拠り所に、静かな空・平穏な日常生活の実現を求めて起こされたのが、厚木基地騒音訴訟である。
(文中敬称略)
つづく
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