ところが、いま日本が再び戦争のできる国になりかねない状況があります。私はそんな日本になってほしくない、なってはいけないという気持ちで取材を続けています。

さて、日本はいま戦争の直接の加害者にまではなっていませんが、アメリカの戦争に協力することで、すでに間接的な加害者の立場に立っています。在日米軍基地がイラク戦争の出撃拠点であり、後方基地の役割を果たしているからです。

神奈川県の横須賀には米海軍第7艦隊の基地があります。そこを母港とする空母キティーホークは、2003年3月のイラク戦争開戦のときにペルシャ湾まで行き、空母艦載機であるFA-18戦闘攻撃機などがイラクを空爆しました。5375回出撃して、約390トンの爆弾を投下してきたと発表されています。巡洋艦カウぺンスなど2隻の軍艦からはトマホーク巡航ミサイルが約70発発射されました。

また、青森県にある米空軍三沢基地のF-16戦闘機部隊は、クウェートにあるアメリカ軍の基地を拠点に、イラク戦争開戦時に空爆もしました。三沢基地のF-16部隊は現在もイラクに派遣されています。今年の2月から、米空軍の航空宇宙遠征軍という部隊に組み込まれて、ローテーションで約12機ずつイラクにある米軍基地に行っています。

インターネットで三沢基地のホームページを見ると、「F-16がイラクでエアパワー(航空戦力)を発揮している」という記事があり、どこそこを爆撃したと記されています。このように現在も、在日米軍基地から出撃した飛行機がイラクで空爆をしている現実があるのです。沖縄に駐留する海兵隊も、イラクに出撃して市街戦に参加しています。

yoshida_rensai001米軍機は日本の上空を飛び回って訓練をしています。空母キティーホークの艦載機が拠点にしているのは厚木基地です。厚木基地は神奈川県中部の綾瀬市と大和市にまたがってあります。空母が横須賀に入港すると、艦載機は厚木基地に飛来して、離着陸訓練などをするのです。パイロットとその家族も基地内に住んでいます。

米軍機は伊豆諸島沖の太平洋上空や群馬県渋川市上空での訓練飛行もします。渋川市は赤城山と榛名山にはさまれた所で、その上空は自衛隊の訓練空域ですが、米軍にまた貸しされているのです。米軍機は橋や発電所やダムなどを仮の標的にして、急接近する飛行訓
練などをしています。このように日本の空が、アメリカ軍の戦争のトレーニング場になっています。

私はいま川崎市の北部に住んでいます。厚木基地から北東に十数キロの所です。家の上空を米軍機がよく飛んでいます。これがイラクで空爆をして多くの人々を殺傷してきたのだという問題意識を持って見ると、血塗られた飛行機として目に映ります。もしかすると将来、この米軍機と日本の軍用機が翼を連ねてどこかの国を空爆する、地球的規模で出撃するような時代を迎えかねないと考えると、恐ろしくなります。

このような在日米軍基地の維持のために、日本政府は年間約6000億円以上もの国費つまり税金を使っています。滑走路、格納庫、倉庫、兵舎、岸壁など様々な施設の建設費、電気・水道・ガス代、日本人従業員の人件費などです。日本はアメリカの戦争を支持し、基地の維持に手を貸すことで、アメリカ軍に殺傷されるイラクの人たちに対して間接的な加害者の立場に立っています。かつてはベトナム戦争の時も同様でした。
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