イラン・バムでの日本人大学生誘拐
【日本が誘拐されたと報じられたバムの中心街】
10月11日、日本人大学生・中村聡志さんがイラン南東部ケルマン州バムで武装勢力に誘拐されたと報じられてから、刻一刻と現地の情勢や犯人像が明らかになっている。
現在(12日未明)明らかになっているのは、犯行グループは同地域で活動する「シャハバフシュ」という名の麻薬密輸組織であり、中村さん解放の条件として、刑務所で拘留されている仲間の釈放を要求しており、政治的な意図はないということだ。
この組織は今年8月にはバムからわずか60キロほどのファハラジという街付近で、自家用車で旅行中だったベルギー人カップルを誘拐し、やはり仲間の釈放を要求している。
ベルギー人カップルは、女性はすぐに解放され、男性も1ヶ月と時間を要しはしたが無事解放された。そのことから今回の中村さん誘拐事件に対しても楽観視できるとの見方が有力だ。
◆事件の起こったイラン南東部とは
イラン南東部ではここ数年外国人の誘拐事件が続発しており危険極まりない地域である、との報道は、今回の事件に対する日本のメディアだけでなく、ベルギー人カップルが誘拐された当時の欧米メディアにも溢れている。
この地域で外国人が誘拐された事件は、ベルギー人カップルの前は、前年の2006年1月にトルコ人3人が、さらにそれ以前となると2003年にドイツ人とアイルランド人の自転車旅行のグループが誘拐された事件にまでさかのぼる。誘拐事件が続発しているとは必ずしも言えないし、彼らのいずれも殺害されてはいない。
とは言え、治安が悪い地域であることも確かだ。
イランは、アフガニスタンとパキスタンからヨーロッパへの麻薬密輸ルートの中継地であり、国境周辺は麻薬密輸組織が活発に活動している。
2002年、アフガニスタンでタリバンが倒され、それに続く新政権が国内で麻薬撲滅のためケシ栽培の取り締まりと代替作物の奨励を行なった結果、一時的にアフガニスタンでのケシ栽培が減少したが、それも束の間、その後は年々ケシ栽培は増加し、イランへ密輸される麻薬も増加した。
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