話してくれた人たちのうち、騒音公害訴訟の原告になった人はひとりだけだった。その他の人たちの大半が、
「住民運動や裁判は時間も手間もお金もかかるので加わる気はない」
「裁判をしても国が相手だから駄目だろう」
「もうあきらめている」
など、基地と爆音の既成事実の壁を反映するような言葉を口にした。
しかし同時に、
「日米安保は必要だと思うが、裁判を起こす人の気持ちは理解できる」
「爆音は違法の判決の影響は大きく、政府に硫黄島のNLP 代替訓練施設を作らせる圧力にもなった」
など、騒音公害訴訟に肯定的な発言も相次いだ。
艦載機がイラク戦争で空爆をしてきたことは、半数以上の人が知っていた。
しかし、
「遠い国のできごとで、身近な問題として感じられない」
「あれが米国のやり方だから」
「国レベルの問題だから何とも言えない」など、関心は薄い。
ひとりだけ、厚木爆同の会員や騒音公害訴訟の原告ではないが、70代の男性が、「在日米軍基地を認めて、その維持費に国費を使っているのは、いわば米国の戦争の後押しだから、日本は間接的に加害者の側に立っている。
ベトナム戦争の頃もそうだった。
基地は戦争の道具なので必要とは思わない」と批判的意見を述べた。
(文中敬称略)
~つづく~
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