しかし、検察は録音された内容に関しては捜査をせず、逆に事件を報道したMBCの記者を、通信秘密保護法の違反の罪で起訴。
この記者には懲役2年、資格停止1年の有罪判決が下っている。
さらに、その録音内容に基づいて、サムスンから現金を受け取った疑いのある検事9人を告発した国会議員は、逆に名誉毀損で訴えられ現在、公判中なのである。

このように、韓国では、司法ですらサムスンに逆らわない態度を取って来たのである。
今の韓国は、国民が「サムスン共和国」と自嘲気味に揶揄するほど、サムソン財閥が強い影響力を持つようになった
中核のサムスン電子の連結売り上げ高は、04年で750億ドルに達し、韓国の総生産(GDP)の約10%近くになった。

また、韓国の総輸出額の21%をサムソングループが占有している。
韓国におけるサムソンの地位の巨大さがお分かりいただけるだろう。
広告収益に依存しているメディアも、サムスンの顔色をうかがわなければならなくなっている。昨年、サムスンの人事問題の記事を掲載しようとした人気週刊誌「時事ジャーナル」は、社の経営者が編集部に圧力をかけて掲載を潰し、反発した記者たち全員が辞職する騒ぎに発展した。

今回の裏金疑惑事件も、当初は大きく報道されず、1面トップに載せたのは「ハンギョレ新聞」のみだった。
その後、世論の関心が高まって初めて、マスコミはお互いの顔色を見ながら、疑惑を報道するようになったのだ。
国民に事実を伝える義務があるジャーナリズムすらも、サムスンの金の前ではひざまずいてしまうのが、今の韓国の現実なのだ。

韓国は国民の手で民主化がなしどけられて20年を迎えた。
しかし、経済の面では、まだ民主化はほど遠いといわざるを得ない。
今回のサムソン裏金事件をきっかけに、政治・司法と財閥の癒着の問題にけりをつけなければならない。
言論の果たすべき役割は重要だ。
今の韓国社会にとってもっとも重要なのは、もしかすると、誰が大統領になるかよりも、サムスン問題の方なのかもしれない。

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