魚に対する需要があり、海には魚がいる。政府による経済統制が麻痺している間に、市場メカニズムが動き始めた。
民衆は統制のくびきを離れてそこに参加し、獲る者、運ぶ者、売る者が生まれた。それがサイクルとして連なり、流通網ができあがったのだ。
市場のパワーである。
平壌の市場に並ぶサンマは、拡大する市場経済が、国家主導の統制経済を飲み込んでしまった姿を映し出さしているのである。
市場の中には花屋もあった。「花 お買いなさい縲怐vという音声が記録されている。
2002年に平壌から脱北した李烈さんも、「花屋の出現にはびっくり」
その花屋の前で、立って物売りしている2人の女性。右の女性のたらいの中身はわからない。
左の女性が持っているのは「食卓塗装」の文字が見える。
2人とも、市場の中で無許可で立ち売りしているようである。
高級幹部の家族か新興の成金なのか、身元はもちろんわからないが、派手な襟元のレースがひときわ眼をひいた女性。
軽食コーナーのようである。
赤いものは、「トゥブパプ」。日本語で言うなら豆腐ご飯、ルーツは日本からの帰国者が持ち込んだ「いなりずし」だ。
油揚げにご飯を詰めて、コチュジャンなどの薬味を塗る。北朝鮮ではすし飯が口に合わず、朝鮮風に進化したのだという。
実は、筆者はこのトゥブパプを食べたことがある。
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