【タリバン政権崩壊直後のアフガニスタンに入り、リポートを送る綿井健陽(カブール・2001年)】
この日の紙面は、現場にいない記者が通信社電やテレビのニュースを丸めて作文したという意味からも、「汚点」としてジャーナリズムの歴史に残る。
これについては朝日新聞の紙面審議会(03年6月6日付の紙面)での私の指摘などを参考にしてほしい。
いずれにせよ、「安全が確保できない」という理由で戦場取材を行わないのは、ジャーナリズムのグローバル・スタンダードではない。
欧州の記者たちは百数十名もバグダッドに留まって取材を続けており、空爆を受ける側の被害報道により、戦争を仕掛けた米英への批判的な立場を担保することができた。
バグダッドに記者がいなければ、その視点を貫くことはむずかしい。
その点からも、開戦前からイラクへ入り、空爆下のバグダッドでリポートを送り続けた佐藤、山本らの果たした役割は大きかったと思う。
「世界のテレビはイラク戦争をどう伝えたか」(「年報2004」・NHK放送文化研究所編)という精緻な報告書によれば、NHKと民放の代表的なニュース番組が流したイラク戦争の実写映像は、使用頻度順に、(1)隊列を組む(米軍の)戦車(2)(米英軍による)イラク軍施設の破壊(3)(米軍艦船などからの)ミサイル発射となっており、視聴者へ届けられた映像は戦争を仕掛けた米軍側のものが圧倒的に多かったことを示している。
少なかったのは、攻撃を受けたイラク人犠牲者の映像である。
全体として米国の情報操作に乗せられていたというわけだ。
もし米軍サイドからの情報とイラク市民の死傷者を報じる情報の量が逆転していたなら、世論はイラク戦争反対へと大きく傾いていたにちがいない。
(敬称略) (つづく)