406843_20071101110930_1.jpg【竹島に上陸する筆者。日本の外務省は「韓国から邦人が島に入域することは韓国の管轄権を認めることになる」とし、一方の韓国側も日本人の上陸を認めようとしなかった。日本のメディアは政治的影響を懸念し、核心の現場に迫ろうとしない。これでは実効支配の状況や、韓国人の主張がどういったものなのかは見えてこない】

当時、首相の靖国神社参拝や歴史教科書の問題などと相まって、竹島をめぐる日韓の確執は一触即発とも思えるほど高まっていた。
しかし、テレビ、新聞には肝心の竹島や周辺の島のリポートが出てこない。
それなら私が行ってみよう、と韓国へ渡った。

そのとき、ソウルで旧知の特派員に竹島ルポをやらない理由を尋ねたら、「日本大使館から、竹島取材は自粛してほしいとの要請を受けている」との答え。
また、竹島を韓国側から訪れることで、右派的な雑誌に叩かれることも嫌だという。
領土問題はきわめてナイーブな問題であることはわかる。
しかし、なぜ政府や外務省の顔色を伺わねばならぬのか。

いまもって理解不能である。
大切なのは読者や視聴者に必要な情報を提供することであり、何をどう取材するかはジャーナリズムが判断することである。
その局面において、公権力と対峙することは避けられない。
最初から公権力に屈していては、ジャーナリズムとは言えない。

(3)なぜ脱北者を取材しないのか
02年5月8日、中国・瀋陽の日本総領事館へ五人の脱北者が駆け込むという事件が起きた。
この出来事は事前に情報を与えられていたメディアによってビデオ撮影され、領事館の職員が彼らを中国の公安(警察)へ引き渡すシーンが日本中に流れてしまった。

この事件の直後、アジアプレスへ「脱北者の取材映像がほしい」という問い合わせが殺到した。
アジアプレスでは石丸次郎が90年代初頭より、二十数回に渡って中朝国境で脱北者の聞き取り調査を続けていた。
数百時間に及ぶ映像素材もあった。
瀋陽総領事館の事件で、脱北者へスポットが当たることになったが、どのテレビ局にも映像素材がほとんどない。

それでアジアプレスへ連絡をとったというわけだ。
それではなぜ脱北者の映像がないのか。
これも理由は簡単である。
北京駐在の特派員はこう語っている。

「中国政府の意向をおもんばかった結果です。中国は脱北者を不法入国者として扱っており、国境地帯で外国人のジャーナリストたちが取材することを好ましく思っていません。
中国当局からにらまれると他の業務でも支障が起きるので、当面、取材の自粛もやむをえません」
北朝鮮では自由な取材ができない以上、脱北者からの証言は国内の状況を判断する貴重な材料となる。
中国政府の圧力とはいえ、その取材を自粛することの問題点は大きいと思える。
(敬称略) (つづく)

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