だが、辺区長は、その手形に「この女は怪しいので取り締まるように」と書いたのだ。字が読めないその女性はそうとは知らず、取り締まりをしている日本の巡査に、その「証明書」をそのまま見せてしまう......。
映画の中の「辺区長の手形」は、日帝時代の行政末端の役人たちが自分勝手に権力を振るって、やりたい放題に不正を働いたことの象徴として演出されている。
今の「先軍政権」が勝手に定めた今回の「準戦時」の期間中にも、上からの「取り締まれ」という指令があるのをいいことに、末端の役人や幹部たちは、自作の「通行証明書」まで作って取り締まりをしていたというのだ。
目的は、賄賂や罰金によって私腹を肥やすことだ。
リ・ジュンに言わせれば、「辺区長の手形」が大手を振ってまかり通るほど、今の朝鮮は秩序が乱れている、というのである。
一方、「準戦時」と呼び方はいかめしいが、なんということはなかったという報告もあった。
「一般社会生活においては、ミサイル発射以前と比べて新しく現れた特別な現象は見られない。特に多くの一般民衆の生活は、以前と違いはない」(記者シン・ドソク報告)。
(つづく)
注1 中学五~六学年の男女学生全員を網羅する予備軍事組織。
注2 警備総括地域の最末端の行政組織の人民班では、見慣れない者や他地域の者を通報監視したり、灯火管制をしたりという、いわば「町内会の警備」の仕事について、しばしば総括会議が行われる。
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