「お前らの頭の中は昔の治安隊(注3) と何にも変わらねえじゃねえか!何が欲しいんだ?」
茶髪は国で禁止されているというのに、そのことで逆に糾察隊に食ってかかる夫婦のたくましい姿に、周りの見物人たちも感心してざわめき始めた。
「金を出したんだったら、取り締まらなくていいんじゃないのか?」

「糾察隊は治安隊だってのは、まったくその通りだ。うまいこと言うよ!」
人々が口々に茶髪への同情と声援を送ったものだから、糾察隊も困り果てて夫婦を解放してしまった。
茶髪の女とその夫を取り締まった糾察隊は、青年同盟の非社グループ の所属だった(注4)。

軍隊を鑑定除隊(注5)になったあと職業につけずにいる若者たちが選抜されるが、彼らの多くは一般社会の青年たちに敵対感情を持っている。この他、青年同盟には「大学生糾察隊」 と、中学生で構成される「学生糾察隊」というのがある。この二つとも、社会主義の生活風紀を乱す人々を取り締まる。
その他、「女性同盟糾察隊」と「労働者糾察隊」がある。

このように、先軍政府は、法務につく役人でもない青年や女性、労働者などの一般人に、都市住民の髪型や服装などの軽微な違反を道端で取り締まる権限を与え、罰金も好き勝手に受け取って私腹を肥やすことができるようにしているのである。
次のページへ ...

★新着記事