リュウ:初めからそうではなかったはずだ。もっぱら配給制の外に追いやられた人民は、苦難の行軍の初期、「配給途絶」の衝撃の前にあっという間に倒れてしまい、最初は国家にすがりつくしか生きる術を知らなかった。
それでも人民に背を向けた先軍政治(注)は、(瀕死の)民衆たちを冷たくも蹴り飛ばしたのだ。

膨大な数の人々が飢えて死んだ。さらに、核心階層(政権に忠実だと分類された人々)の命乞いにすら、黙して手を差し伸べようとしなかった。
そればかりか権力者たちは、誰もが皆、自分の蓄財にだけは熱中した。社会には公然と貧富の差が拡大した。もはや、誰も自分の国を社会主義国家だとは思っていない。

政権は計画経済をすべて破壊してしまう一方で、(国民の)共有財産を詐取し、食い尽くして底が見えると、今度は一転して顔色を変えて「実利」(編集者注:インタビュー者は実利に関する問題を後に話している)を唱え始めた。自分たちにだけ有利ならば万事それでいいのだ。
「このまま赤旗を守っていたのでは、我々だけが飢え死にしてしまう」という恐怖に、民衆ははたと気がついた。党と国家の本性に気付いた民衆は市場に走った。数十年間眠っていた民衆の「商売魂」が目を覚ましたのだ。
(つづく)

注 先軍政治
あらゆる面で軍を優先・重要視する政治。90年代の体制危機の時に、軍優先、軍投入の非常時体制を採ったことから始まった。
先軍政治については詳細な説明を要するが、ここでは簡単に触れておくにどめる。

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