わがもの顔で街中を進むニッサンの大型四輪駆動車。乗っているのは、どこかの機関の高級幹部に違いない。
(2007年8月黄海北道沙里院 リ・ジュン撮影)

 

1970年代から在日朝鮮総連と手を組んで始めた貿易と外貨調達ビジネスは、北朝鮮上層部の既得権の要だった。
そのため、北朝鮮には日本製のトラックや乗用車、自転車が非常に多い。

ところが、2006年のミサイル発射と核実験によってもたらされた日本の経済制裁に対し、朝鮮政府は強く反発し、これらの日本製品に対し、逆制裁措置を取る動きを見せた。
しかし、制裁としての実効性の全くないこの措置には、朝鮮国内から多くの不満の声が出ている。そんな中で伝えられてきたエピソードである。
2007年2月のある日、平壌でのできごとだという。

金正日総書記が車に乗って通りを走っていた。すると一台の車が猛スピードで金総書記の車を追い抜いて行った。無類の自動車好きである将軍様は、ムカッときてこう言った。
「おい、あれはどこの車だ?」

「軍の外貨調達会社の車です」
運転手の答えを聞いて、将軍様は言葉に詰まってしまった。運転手が腹の中でこう言っているように聞こえたのだ。
―あなたが始めた先軍時代じゃありませんか―
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