【町の裏通りを行く野菜売りの行商人。売り上げの多い日で一日二万Kを稼ぐこともある】
ハアハアと息を切らして汗を拭いていると、近くにいたビルマ人が何人かこちらを見ているのに気づいた。
彼ら彼女らの目線を感じて、勢い込んで両替所を目指していた気分が萎えてしまった。
自分はビルマを見ているが、彼らも外国人の私のことを見ているんだな。
そのことに気づいて、なんか変な気分がした。
私を見ている彼らは、私がこれから両替に行くなんて知らないはず。それなのになにか居心地の悪さを感じてしまった。
それに、両替の差益で金儲けをすることは別に悪いことではない。
確かに汗はかいているが、額に汗して働いているのではないのは確かだ。
日本に4年ほど住み、その後ビルマに戻ってきた知人がいつも口にしている言葉を、ふと思い出した。
「それにね、日本では働くっていう、そのことに意義を見い出しているでしょ。仕事を通して自己実現だとか、社会への関わり合いとか。でも、ビルマでは、働くとは単にお金儲けの手段であって、それ以外の意味はないの。生活が貧しいから仕方ないの」
その日、両替に行くのをやめてしまった。
終わり
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