しかし党の上部からは、不正行為は失くせとの指示がしょっちゅう来る。洞党秘書の力では、こういう軍関係者の家に対して何もできないのだ。
そんなわけで、会議で指示を伝達していた洞党秘書は、やる気をなくしてしまったのだ。
彼女は、それでも残りの伝達事項を機械的に読み上げていったが、声に力が入っていなかった。そこで出たのは、次のような半ばぼやきを交えた指示だった。
「最後に大事なことをひとつ。不純録画物(注4)を見るような人はこの洞にはいないと思います。
思いますが、最近、ある非通信(密告)によると、その手のものを手に入れてタンスの中に隠し、見ようか見まいか迷っている人がいます。
最近は電気がまともに来ないので、見ようという人はいないと思いますが、もし迷っているなら、今からでも遅くありません。
早く洞党に提出するか、台所のかまどに入れて燃やしてしまうこと。いいですね。
今日はこの程度にしておきますが、わが洞、○○2洞の住民の皆さんは、最近、慢性病にかかったように行動しようとしません。
この際だから言いますけれど、ある女性なんか、洞党秘書に会っても挨拶もしません。
それでも私はその家の子供たちに頼まれれば、身元確認やら何やら、いろいろやってあげてるんですよ、ほんとに。
また、ある同志なんか、本当に態度が大きい。
まあ、10年経てば山河も変わると言うけれど、16年も党の仕事をやってて、私もね、あそこの家はどうだとか、ここの家は機関企業所にお金を入れて出勤したことにしてもらって、働きもせず365日家にいるだとか、そういうこと全部知ってますけどね、私は何も言いませんよ。
それで、洞の安全委員会(洞に組織される統制機関)で今回討論しました。これまでは結構目をつぶってきたが、一部の住民に非行があるようだと。
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