APN_080320_yanagimoto_001.jpg「銃弾」
このままいけば八年ぶりに国民党政権が復活する。
四年前はさらに混戦だったが同じような状況にあった。一晩で戦況がひっくり返ったのは一発の銃弾であった。

投票日直前の三月十九日、群集のなかから飛び出した一発の銃弾が陳水扁総統と呂副総統の身体をかすめて走り抜けたのである(ともに軽傷)。
犯人らしき人物は自殺したとされ、真相は闇に包まれたままだ。

この事件がなかったら…とこの間繰り返し語られてきた。
確かにこの「空疎な四年間」はこの事件がなかったらありえなかったのかもしれない。それだけに国民党陣営とその支持者の怨念と執念は我々の想像をこえる。
昨日、無事にこの問題の三一九を乗り越えた。テロの噂は流れるものの、台湾史上、日本時代も国民党時代も要人の政治テロというものは極めて少ない。

では総統を狙った犯人の目的は、なんだったか。
選挙賭博という説が囁かれている。台湾人の不可解な行動の裏にはたいてい黒いカネがあるというのである。
この「四年」がなければ陳水扁も民進党もここまで落ちることはなかっただろうし、実に大きな禍根を残した「テロ」だった。

五月がくれば政権の座をおりる陳総統は、ただちに被告の席に座ることになる可能性がある。自分は決して国外に逃亡することはない、と述べつつも、一方で、米国のグリーンカードをもっている人物には政権を引き継げないとも表明した。馬英九には総統の椅子を渡せないということである。

たとえ投票が無事に終了したとしても、五月の就任式まで台湾に「平和」は期待できそうもない。
昨夜は謝長廷陣営がチベットの犠牲者を悼むセレモニーをおこなった。そばにオレンジの法衣を着た人を小道具のように立たせている。彼らも謝長廷につくか、馬英九につくか判断に苦しむところであろう。

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