【定住化がすすみ、かつてのように幌馬車で流浪生活を続けるロマたちの数は年々少なくなりつつある】撮影・玉本英子
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テント暮らしのロマ
エディルネ市内から30分ほど車を走らせると青く穂をつけた麦畑がなだらかにつらなる丘が拡がる。
村はずれの草原地帯には白く小さなロマのテントがぽつりぽつりと並ぶ。
テントといっても、小麦を入れる麻袋のような大きなビニール袋を繋ぎ合わせてつくったものだ。
私は籠(かご)編み職人のバスリ・アイデミルさん(28才)一家を追ってきた。
両親、兄弟5人、その妻たち、孫たちの合わせて29人が、ともに移動生活を続けている。 一家は幌馬車でエディルネ県内をまわる。携帯電話などの通信手段を持たないため、いちど居場所を見失うと簡単に見つけることはできない。
地元のロマの「口コミ連絡網」に頼りながら、バスリさんのテントを追跡した。2日かけて、ようやくバスリさんのテントを見つけることができた。
「また来たのかい」 バスリさんは、少しあきれたような表情をしながらも、私をテントのなかに招き入れてくれた。
ロマの人びとは「ガジョ(よそ者)」を嫌う。それでも奥さんがチャイ(紅茶)を入れてくれた。
ヒビの入ったグラスに琥珀色のチャイが注がれた。 (続く)(初出 2001年)
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(トルコ・エディルネ発)