「息子が自殺したのは、いじめられて精神的に追いつめられたからにちがいありません」
秋雄の自殺から半年後に公表された、海上自衛隊の事故調査委員会報告書(以下、報告書)によれば、秋雄は最後の航海中、「眠れない」「集中できない」「落ち着く所がない」と発言していた。
亡くなる日の朝は、軸室でロープを手にしている姿を一旦は同僚に目撃された。
声を掛けられて軸室を出たが、その直後に医務室前で同じ同僚とまた顔を合わせ、「変なことを考えるなよ」と言われて、別れている。
そして約1時間後、軸室で首を吊っているのを発見されたのだった。
自殺の原因について報告書は、「遺書もなくその原因を特定するには至らなかった」としたうえで、こう結論づけている。
「3等海曹という階級と、それに見合う自己の技能練度との乖離に苦悩し、あせりを徐々に募らせていった状況が認められ、この心理的葛藤が本事故の大きな要因の一つであると判断される。......中略......。事故者は、このような仕事上の悩みを上手に解決する、あるいは、軽減することができる方策に思い至らず自殺に至ったものと推定される」
そして、「遺族から訴えのあったいわゆる『いじめ』については、その事実は認められない」と否定し、「技能訓練についても事故者に対し、行き過ぎた指導、あるいは、事故者のみを対象とした厳しい指導が行なわれた事実は認められない」と断定している。 ~つづく~
(文中敬称略)
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