【NLD本部側から軍政側を見る。双方が写真やビデオを撮りあう】
その場にいる取材関係者は、外国のメディアの地元契約記者のビルマ人ばかりである。
外国人の取材者は私1人きりであった。
否が応でも私の姿は目立ってしまう。
もう観光客を装うのは無理だと観念する。
早速、軍のインテリジェンスらしい1人から声がかかった。
「どこから来ましたか」
「観光で来たのですか」
「ホテルはどこに泊まってますか」
「どうして今日、ここに来たのですか」
「いつまで滞在しますか」
あくまでも丁寧な口ぶりだが、なんとまあ分かり易い質問なんだ。
問い返してみた。
「あなたは警察の人ですか」
「いいえ」
彼は先ほどまで、腰に通信機を付けビデオカメラを手にしている男たちと親しく話をしていたのだ。
見え透いた嘘だ。
10時過ぎ、激しい雨が降り出してきた。
全身びしょ濡れになりながらも、NLDのマーク入りの笠をかぶって本部の前に立つ若者たち。
自分の意志の強さを全身で表現しているようだ。
あまりにも強い雨の勢いで、雨合羽や傘は全く役立たない。
NLD本部のすぐ横にあるお米屋さんの軒の下に避難することにした。
雷鳴が響き渡る。
本当はNLD本部の中に入って雨をやり過ごすこともできるのだが、さすがにそれはやり過ぎだと思って自重する。
つづく
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