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【スーチー氏の誕生日の集会が終わりに近づいた頃、スーチー氏の顔写真のプリントされたTシャツを着たまま現場を離れる民主化活動家。通りの向こうでは軍政の情報部員が喫茶店で雨宿りをしている】
もしかしたら地元の記者たちは無意識的に、自分たちが契約を結んでいる外国メディアの好むような取材結果だけを送っているのではないか。

「軍事政権」対「民主化勢力」といった単純な構図だけのニュースだけを。
そこには、どちらにも属さない大多数の普通のビルマ人たちの存在が抜け落ちているような感じがする。
今回ビルマに来て8ヶ月。
民主化勢力を支持しながらも、表だって行動的しない大多数の人びとがいるのは知っている。
だが、彼らは、敢えてどちらの側にも属さず、政治に関わろうとしない。

目の前の4車線の道路を行き交うバスに乗っている人たちがその象徴でもある。
軍政側とNLD側を隔てる四車線の道路の間に横たわるのは、単純な政治的立場の違いだけではなさそうだ。
それはおそらく、政治では語ることのできない普通の人の生活感がとでもいえようか。

たとえ明日軍政が民主体制に変わっても、すぐに自分たちの生活が良くなるわけではないということを肌で感じ取っている庶民の感覚のなのであろうか。
軍政側の人びとが動いた。なんだろうと注意を向けると、どうやらNLD本部に欧米の大使館員の訪問があったらしい。
横にいた記者が私に向かって口元を緩めた。

「日本の大使館の人は誰もここに近寄らないね。この国の民主化を求めるなら、きちんと態度で示した方がいいのにね。いつも軍の幹部と並んだ記事ばかりだしね」
雨が小降りになってきた。再びNLD本部前に行こうとお米屋さんの前を離れようとした私の背中に声がかかった。

「政府が動員したUSDAのメンバーが通りの両側に500人ずついるから、もしかしたらNLD側ともみ合いになるかも知れない。ヤツらはジャーナリストを目の敵にしているから、どさくさに紛れて危害を加えられるかも知れないから、十分に注意するように」
NLDと並ぶビルマ国内の民主化グループ「88年世代学生」たちは今日、現れないようだ。

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