商売をする人の群れに混じってコチェビが草むらでごろんと横たわっていた。男の子のようである。
人が集まれば、食べ物屋が登場するのは、世界共通の道理か。
即席屋台で冷麺を頬張る女性は、ポニーテールにキャップを被ってなかなかおしゃれだ。
シリーズでご覧いただいた平壌の裏通りの姿はいかがでしたか?
もっとも待遇がよく、また、もっとも統制の厳しい平壌でも、市場経済が爆発的な拡がりを見せていることがわかる。
それは誰に教えられたり、指示されたりしてできものではない。
民衆が生き抜くために、より豊かになるために活動した結果なのである。
「商売はね、最初は恥ずかしくて顔も上げられないし、『いらっしゃい』と声をかけるのも勇気がいるんです。それが、こんな実に堂々としている。この平壌の市場の増殖ぶりには本当に驚きました。」
2003年まで平壌に住んでいた脱北者の李烈さんの言葉だ。
リ・ジュン撮影の映像に映し出されている女性たちは皆、物怖じしているようには見えない。
つまり、商売を始めてのキャリアが相当にあることを窺わせるのである。
この自然発生的、野生的な市場を、北朝鮮当局は敵視し、罰金や、商品没収も含めた厳しい統制に乗り出している。11月現在の情報だ。
市場の拡がりを体制を揺さぶる危険因子と判断しているのだろう。
「もう市場は絶対に後戻りできない」
「統制は一1カ月ももたないのでは」
北朝鮮内部の共通した声である。
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