いっそ支援物資がないほうが......
シム:ところで、その韓国からの援助物資は、誰が持って行ってしまうんだろう?
チュ:軍部だよ。軍部にまず入っていって、そしてあとは、何か重要な工事現場にたくさん送るんだ。
去年も洪水被害で韓国からセメントとか、薬とか、医療品や食料品がたくさん来たけど、実際に被害を受けた人たちは何一つ受け取ってない。
うちの郡にも、韓国のセメントが八〇〇トンぐらい入って来たけど、被害を受けて家もなく寒空に放り出された人たちは、何ももらってない。国家はちょっと分ける〈ふり〉をするだけさ。その〈ふり〉ですら、郡の上の連中、権力のある連中だけで分け合ってるだけだ。
韓国の製品はモノがいいからな。それで、人民にすれば、韓国がくれようがくれまいが、自分たちとは関係がないもんだから、気に留めなくなったてわけさ。
ウォン:よけいに腹が立つな。目の前にモノはあっても、本当に必要としている自分たちはもらえないんだから。
洪水被害の当事者をさしおいて、幹部たちだけががめているわけだ。
チュ:腹が立つことばっかりだよ。心の中ではみんな、民衆がもらえないんだったら、かえって送ってくれないほうがましだって思ってるよ。
国家が韓国からコメを受け取ることになっても、「韓国が食糧何万トンをいついつまでに支援してくれる」って報道するだけだ。医薬品とか布団とか何か、そんな生活必需品が来たって報道すらしないんだからな。だから、民衆がもらえるんだったら持って来てくれ、もらえないんだったら持ってくるな、こんな気分になるんだ。
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