彼ら全員と目が合った。
そう、この一瞬が、大切。
「あ、あれは何? 何しているんですか?」
囚人たちの耳にも、私の声が届くように声を上げ、バイクを降りながら、カバンの中からカメラを取り出しす。

すぐ横を、赤土を積んだ大八車を押す囚人が道を横切った。
運良く、そのうちの一人に足枷がはめられていた。
あくまでも自然な形でシャッターを切る。

足枷をしていたのは、10人くらいいた囚人のうち、彼1人だけだった。
辺りには看守はいないのか、誰にも写真撮影を止められない。
燃料小屋で働いていた男たちが数人物珍しそうにこちらを見ている。
アップの写真が必要だ。

もうあと少し撮らねば。
だが、足枷の囚人は動き回っており、なかなか近づけない。
どうやら彼は、写真を撮られるのを避けようという感じがする。
この間、30秒ほど。

これが限度だな。
あまりしつこく写真を撮ることはできない。

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【マンダレー管区で見かけた足枷を付けた囚人。彼がどのような経緯で足枷をつけられたのかは分からない。後日、ラングーン(ヤンゴン)の国際赤十字委員会(ICRC)を訪れて、ビルマ国内の囚人の扱いについて話を聞いてみた。だが、ICRCは2005年12月の後半からビルマ軍政の圧力により刑務所関係の活動の中止を余儀なくされ、この1年半の囚人の取り扱いの詳細については承知していないとの返答だった】
「じゃあ頑張って仕事をしてね」
囚人たちに手を上げて別れを告げる。

彼らも手を上げて笑顔で応えてくれる。
心臓がドキドキと脈打ち、喉の奥がカラカラになる。
でも外見は落ち着き払って、ゆっくりとその現場を離れる。
彼らの視界から私の姿が見えなくなるのには300メートルほどかかった。
バイクを止めて撮った写真を確認する。

ハッキリと映っている。
これで一安心。
さ、もう一カ所ある。
そのままバイクを約5分ほど走らせる。

もう1カ所、囚人の働いている場所が目に入ってきた。
道ばたにバイクを止める。
すぐに走り出すことができるよう、バイクには鍵を付けたままにする。
ざっと見て、こちらも10人ほどの囚人が働いている。

足枷をしているのはそのうち2人だけだ。
私の姿を目にとめた囚人たちは、一斉に手を止めて私の方をいぶかしげに見やる。
カバンからカメラを出し、彼らに向かって、カメラを向けてシャッターを切った。

すると突然、「ノー!、ノー!」」と声が上がった。
囚人の中にいたポロシャツ姿の男が血相を変えて飛んで来た。

両手をバタバタさせて撮影を遮ろうとしている。
えっ、彼は看守? この男が。
でも、制服を着用してないぞ。
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