だけど、我々、庶民・民衆が、なんで巻き込まれないとあかんの? 今までろくに食べることもできないのに忠誠を誓ってきたけど、自分のためにいいことは何一つなかったでしょう?
祖国を守ろう、将軍様をお守りしようと、息子も娘も軍隊に入れたのに、栄失(ヨンシル=栄養失調)にかかって、首が細くなってしまい、顔は浮腫んでしまって、とうとう兵営を脱出して家に帰ってきたのよ。
そしたら、部隊から捕まえに家までやって来た!
『息子は渡せません。栄養をつけてから送り返します』と言ってやった。すると『わかった。それではそうしろ』と言って帰ったんです。
いったい軍隊というのは、どれほどたくさんの兵隊が栄失にかかってるんでしょうね。だから逃げ出すんだ。でも捕まえに来る。
ミサイルみたいなものを発射する金があるなら、栄失にかかった兵隊に栄養を与えてやればいいのに」。
市場経済とショーとしてのミサイル発射
この女性の言葉に現れているような現実社会の有様は、「一心団結」などのスローガンがあふれる我が国で、実は国家とその下の組織、そして個人の間に埋めることのできない亀裂が存在していることをはっきり示している。
そうした観点から見れば、二〇〇六年のミサイル発射の本質的な意味とは何かがわかるだろう。
すなわち、朝鮮の民衆たちが「準戦時」を本当に実感してしまって、社会的大混乱を起こすことを徹底的に警戒しながら、そろりそろりと準備された「対外向けショー」であり、また「内部情勢緊張用施策」というところなのだ。
表向きとは違って、政府の本音の政策的意図がどこにあるのかを、平凡な民衆たちでさえ、今回感じ取ってしまった。それによって、さらに国家と住民の間の溝は広がり深まることになってしまったのだ。
我が国政府は、準戦時態勢を宣布することが、米国による金融制裁をはじめとする国際的問題を解決させる手段であり、外国勢力に対する勇敢な行動だと、国民に認識させようと力を入れた。
次のページへ ...