「人民は核実験の理由なんて知らないはずだ」
女性記者ペク・ヒャン（白香）は、一〇・九核実験について、朝鮮の一般の人々の感想や意見を聞こうと、普段面識のある人たちを家に呼んだ。
四〇代の山林監督員と、三〇代前半の化粧品商売をする女性である。二人とは、子供の年齢が近くて親しく、この日の話は思いのほか真剣なものとなった。
ペク・ヒャン：出ると言っていた旅券は出た？ 核実験のせいで影響はなかった？
女商人：出なかったのよ。でも、核実験はやらなきゃね。
私たち朝鮮人は、核実験をどうしてもやらないわけにはいかなかったのよ。核実験やらなかったら、米国が朝鮮を踏みつぶして、圧殺しようとするに違いないから。
監督員：圧殺しようとするかな？
ペク：中国が制裁に出てこないか心配だな。国境を接してるのに。
女商人：中国も、朝鮮に核があった方がいいんじゃないの？ ほら、朝鮮に戦争が起こったら、中国が支援しないといけないのに、もし朝鮮に核兵器があれば中国が支援しなくても済む。
ペク：朝鮮が核兵器を持てば、南朝鮮も作る、日本も作る、台湾も作る。そうなると中国が黙ってると思う？ 台湾が核を持つことを中国が認めるかな？
女商人：朝中関係がどんなものか分ってるの？ 中国が私たちを経済封鎖したら、中国にとっても不利なんですよ。
台湾人たちは、我が朝鮮に経済交流しようといつも言ってる。そして「中国とうまくいかないなら我々と交流しよう。そうすれば朝鮮を皆食わせてやるし、東北三省すべて返してやる」なんて言って来るわけよ。東北三省はもともと高句麗だったから、いわば朝鮮のものでしょう。
「我々は中国を統一し、全て取り戻す！」という態度で、台湾は我が国にたいして出てくるけど、中国が台湾を認めるはずはない。だから我が国が台湾を認めることはないのよ。だから、中国とだけ公式の経済交流をしてるわけよ。台湾はただ言い寄ってくるだけ。
本当のところは、私たちのような商売人は、中国商品と台湾商品を比べれば、台湾の方を質が良いと認めてるんだけど、国の方針だからどうしようもない。
監督員：核実験は、ブッシュが私たちを認めようとしないからやったんだろ。そもそも、米国は我が国が核を持っていることを知らなかったのか？ いや、全て知っていたはずよ。それなのに、今回朝鮮が「核実験に成功した、核保有国だ」と宣布したから問題になったわけだ。結局、米国も応対することになった。
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