朝鮮の幹部の世界では、こんな言葉がよく使われる。
「勝てば忠臣、負ければ逆賊」
(つづく)
注1 「党の生活総和」とは、各自が所属している党組織に定期的に集まって、秘書の司会の下、個人や組織に起こった問題について、その原因を、思想的に分析・批判して対策を立てるというものである。簡単にいえば思想と行動の批判検討集会だ。朝鮮人が一番うんざりする行事である。
一九七〇年代に入って、金正日が党の組織事業を統括して以来、生活総和は二日に一度、または週一回行われるようになった。ここでは、各自が自分の組織責任者に「洗いざらい話す」ことが求められ、私生活をこと細かく組織に報告すると満点と評価される。
しかし、生活総和は党員と党秘書の間を、隷属関係に変化させてしまった。いいかげんな者たちは、秘書におべっかを使ってうまくやり過ごすことだけを考えるが、まじめな考えの者たちは、このような形式的な総和にだんだん嫌気がさしてくる。やる気をなくした人々には、党の領導を拒否したという嫌疑がかけられることになる。
注2 「党の唯一思想体系確立の一〇大原則」を略して「一〇大原則」という。
首領独裁体制が確立した一九六七年六月に前労働党組織部長金英柱(キム・ヨンジュ、金日成の実弟)が立案したものを一九七四年四月に金正日が再整理した朝鮮社会最高の「掟」だ。
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