これは、金日成(首領)への崇拝と服従を、絶対的に、無条件に強要する「十戒」であり、朝鮮がマルクス主義とも社会主義とも無縁のものであることを証明している。

この一〇大原則に違反したとみなされると、厳しい批判に晒され、場合によっては政治犯罪とみなされるので、朝鮮社会が著しく萎縮し発展を阻害する根源となった。

日常的に恐怖に晒された幹部や住民たちは、一〇大原則に引っかからないように行動、発言する「生活の知恵」を身につけた。たとえば、何かを語る時に金日成の言葉を引用してから話し始めるという具合に。

一〇大原則の運用では様々な矛盾が生じている。一〇大原則には「(首領以外の)幹部個人に対する崇拝と偶像化を許容してはならない」という項目があるが、首領様の教示と方針に忠実でしっかり仕事をする幹部党員が、大衆の信頼が高くなって人気が出ると、「幹部個人に対する偶像化が起こっている」という攻撃を受けるようになったのだ。

金日成、金正日は、自分の指示に従って仕事をよくする者を取るか、それとも「一〇大原則」を取るかという矛盾に直面した。

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