ジャンマダンに横流しされる国際支援物資
石丸次郎:現在国家の食糧配給システムはどうなっているか?
ケ:それでは配給体系について少し述べてみよう。
現在の食糧分配体系は、必要とする受給者ではなく、分け与える権力者に最初の権限がある。財政省、糧政総局、各道の糧政局(注2)などが、港に支援米が入って来ると、決められた指示に従って配分するのだが、軍部、方針対象(注3)、重要対象などの順番に、受け取りの優先権が与えられる。該当の単位(組織)は、受け取った食糧の中から三割を必ず分配する単位に売らなければならない。
食糧の絶対量が不足していて、配分権の獲得競争が起きてしまうため、受配者が分配者に受け取った量の三割を譲渡しなければならないのだ。
これは、他の資源、例えば燃料でも同じだ。最近、一軍団の糧食部長が銃殺されたが(このようにケ氏は発言、未確認)、軍部隊の生活基地を建てるのに、燃料を保障しなければならないという名目で、組織的に軍糧米を売りさばいた罪に問われたのだった。
価格が動くジャンマダンを利用した蓄財に、軍団級後方将校が身を投じるほどに、高位権力型の物資横領が発生するのは、現在では珍しいことではない。(注4)
国際支援物資も、今では良くも悪くもジャンマダンに流れるようになった。
それは、結局、個人も企業も、できる限りの財産を、(朝鮮ウォンから)信用力のある外貨に交換することが、闇行為ではあるが簡単にできるようになったからだ。
それを構造化したのは、ジャンマダン経済に他ならない。以前はなかった、個人が蓄財できる仕組みが、今や強固に存在していると見るべきだろう。
もちろん一般庶民も、このジャンマダンを通じて恩恵を受けている。金が仮に三〇%個人蓄財に流れて行ったとしても、残りの七〇%は結局消費されるからだ。
先軍政府が意図する経済正常化(つまりかつての強固な統制経済体制への復帰)とは程遠い現象を、先軍政府の権力者たち自身が引き起こしている。この事実を、冷静に反省する時がやってきたと思う。
国家は二〇〇五年一〇月から、突然食糧専売制を実施した。糧政機関を通してのみ食糧を流通させようとする新しい秩序樹立の試みを断行したのだった。
(ジャンマダンでの食糧流通を敵視する)国家は甚だしいことに、協同農場が農作業に必要な物資を市場で購入することさえ遮断しようとするなど、極端な措置に出た。個人の荷物まで検査して食糧を没収した。個人の畑や小土地(山の隠し畑)の収穫物すらも運ぶことができなくなった。
ジャンマダンは再び大きな衝撃を受けた。
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